年金担保債権管理回収業務・労災年金担保債権管理回収業務
年金担保貸付利用者に関する基礎調査(平成18年度) -調査報告書-
I 調査の概要
1.調査の目的
福祉医療機構では、平成13年度より実施している年金担保貸付事業、さらに平成16年度より実施している労災年金担保貸付事業について、その利用者及び利用しようとする年金受給者の状況やご意見等を把握することにより、より年金受給者のニーズに応えた事業とすることを目的として、この調査を行った。
2.調査の対象
ア | 年金担保小口資金の既貸付者のうち、利用者の多い都道府県を重点に、最近の借入申込者から無作為に抽出した者
対象者数・・・3,000名 |
イ | 年金担保小口資金を借りるため受託金融機関(銀行・金庫・組合)の窓口に借入申込手続きに来店した者
対象者数・・・18,000名 |
3.調査方法
(1) アンケート調査方式
(2) アンケート調査は、次の方法により実施した。
ア | 既貸付者については、借入者本人宛にアンケート調査票を郵送し、記入したうえ、直接福祉医療機構にアンケート調査票を送付してもらうものとした。 |
イ | 受託金融機関の窓口に借入申込手続きに来店した者については、窓口にアンケート調査票を設置し、借入申込みの際に、アンケート調査票を回収した。 |
4.調査の時期
調査対象期間は、次の期間とした。 | |
ア | 既貸付者については、平成18年10月10日から11月17日までの間 |
イ | 窓口に借入申込手続きに来店した者については、平成18年10月25日から11月21日までの間(貸付実行日が平成18年11月28日、12月7日及び26日予定の者)の約1カ月間 |
5.調査回収結果
有効対象者数 | 有効回答数 | 回答率 | |
---|---|---|---|
既貸付者 | 2,834名 | 1,183名 | 41.7% |
新規申込者 | 16,046名 | 3,086名 | 19.2% |
全体 | 18,880名 | 4,269名 | 22.6% |
既貸付者については、実際に債務期間中であることもあり無作為抽出郵送方式にもかかわらず、約4割の比較的高い回収率であり、全体としても約4,300の標本が回収されており、分析に値する回収状況であった。一方、新規申込者については、回収率が2割程度にとどまった。
6.調査事項
調査事項の主なものは以下のとおり。
- 借入利用者の属性、借入額、償還方法等
- 返済中の主たる収入源
- 福祉医療機構以外の年金担保融資の禁止にかかる周知度合等
- ご意見・ご要望
7.分析に際して
・各質問項目において、不明(未回答)等については集計から除外した。
・前回調査は、平成13年度に実施しているが、その調査結果との比較を行った。
II 調査結果
1.借入利用者の属性
借入者の性別については、「男性」が51.8%、「女性」が48.2%で、ほぼ半数ずつとなっている。
年齢別にみると、「66~70歳」が28.0%で最も多く、次いで「61~65歳」が26.7%となっており、これらを合わせて60歳代が6割近くを占め、70歳代は3割を超え、81歳以上は4.8%となっている。
2.利用されている制度
「年金担保融資制度」は、全体の98.3%。一方、平成16年度から導入した「労災年金担保融資制度」は、1.7%となっている。
3.借入金額
借入金額は、「100~110万円未満」が10.8%で最も多く、次いで「50~60万円未満」が9.9%となっている。以下「60~70万円未満」が8.5%、「30~40万円未満」が7.7%と続いている。全体的に借入金額は分散しているが、「10~110万円未満」は、全体の約7割を占めており、借入金額の低額化の変化が表れている。
これは、平成17年10月から導入した借入限度額の引下げ(年金額の1.5倍→1.2倍)によることに起因していると考えられる。
○ 男女別にみると、「50万円以上100万円未満」は、男性では32.4%、女性では42.3%と最も多いのに対し、200万円以上は、男性が14.2%、女性では2.7%と、男性が群を抜いて多くなっており、実に女性の5倍以上となっている。
4.償還方法
償還方法についてみると、「定額返済」は、65.9%、「満額返済」は、34.1%となっている。
5.年金担保貸付の利用状況
年金担保貸付の利用状況については、「はじめて」が34.6%で最も多く、次いで「2回」29.9%、「3回」23.9%の順となっており、2回以上利用者は合わせて65.4%となっている。「4回」以降の利用者は漸減してはいるが、「7回以上」の者も前回調査に比べると減少しているものの、2.1%となっている。
また、2回以上の利用者のうち、継続して利用したことがある者は、59.3%、約6割となっている。
6.年金担保融資制度の情報入手経路
融資制度の情報入手経路については、「金融機関」が最も多く62.3%と全体の6割を超えている。次いで「友達からの紹介」19.6%、「社会保険事務所」9.1%の順となっている。
7.申込みに当たっての相談者
借入の相談者については、「本人のみで決めた」が51.7%と半数を超えており、次いで「配偶者と相談した」が33.1%、「子・孫その他の親族と相談した」が13.2%となっている。
男女とも「本人のみで決めた」が半数を占めているが、男性は女性に比べると「配偶者と相談した」が高く、これに対して女性は男性に比べると「子・孫その他の親族と相談した」が高い割合となっている。
8.一緒の申込者
借入申込みを誰と一緒に申し込んだかについては、「本人のみ」が75.9%と最も多く、次いで「配偶者と」が15.8%、「子・孫その他の親族」が7.3%となっている。
男女とも、「本人のみ」が7割を超えている。
9.年間総収入
○ 借入者の年間の総収入額については、「100~150万円未満」が19.8%で最も多く、次いで「50~100万円未満」17.1%、「150~200万円未満」16.8%、「200~250万円未満」14.0%の順となっている。「100~300万円未満」の年収の者は全体の6割、「100万円未満」及び「300万円以上」の者はそれぞれ約2割を占めている。
○ 収入の内訳としては、すべて年金受給者であることから「公的年金」の収入があるのは当然であるが、次いで「給与」20.4%、「事業収入」7.0%、「子供からの仕送り」3.8%、「私的年金(個人年金などの私的年金)」3.4%の順となっている。
○ 収年間総収入のなかで、金額的に何が一番多いかについては「公的年金」と回答した者が67.8%で圧倒的に多く、次いで「給与」20.2%、「事業収入」7.9%となっている。
10.住居
○ 住居は、「持ち家」53.2%、「借家」39.5%となっている。
平成17年国勢調査による高齢夫婦世帯の「持ち家」の割合(86.4%)と比べると借入者の「持ち家」の割合は低いといえる。
○ 「持ち家」の所有権については、「本人」が53.8%で最も多く、次いで「配偶者」22.5%、「子供」12.7%となっている。
○ 借家に住んでいる者については、「民間アパート」が57.2%で最も多く、次いで「地方自治体の住宅」、「公団住宅」と続いており、知人宅、親類の家など「その他」も増加している。
11.同居状況
○ 同居者がいるかどうかについては、「いる」76.4%、「いない」23.6%となっており、借入者の4人に1人が一人暮らしという結果になった。
○ 同居者がいると回答した者の内訳をみてみると、同居人数は「1人」が最も多く33.0%を占め、次いで「2人」が18.3%、「3人」が11.5%の順となっている。
「同居者がいない」人と同居人数が「1人」を合わせると56.6%となっている。
また同居者がいると回答した中で、一緒に生活しているのは、「配偶者」が約7割、「子供・孫」が約3割となっている。
12.利用目的
○ 誰のために借入するかについては、「自分のため」が57.5%で最も多く、次いで「家族のため」が39.2%となっている。
○ 資金の利用目的としては、「生活費の補充」が56.9%で最も多く、次いで「自宅の増改築費用」15.8%、「冠婚葬祭費」15.4%、「入院等医療費」15.2%、「生活必需品の購入」13.6%の順となっており、このほか「自分の借入金の返済」12.0%、「住宅ローンの返済」2.6%となっている。(複数回答)
13.返済期間中の家計の状況
返済期間中の生活費は、「給料の収入で生活する」が65.1%で最も多く、次いで「定額償還を選択しているので年金で生活する」が61.2%、「配偶者の収入で生活する」41.2%、「子供と一緒に暮らしているので特に生活費はいらない」24.4%の順となっている。一方で、他からの援助を求めなければならない者が合わせて18.3%の割合となっており、その内訳は、「子供からの仕送りで生活する」の11.4%、「他からの借入で生活する」4.0%、「公的機関からの援助で生活する」2.9%となっている。(複数回答)
14.年金担保貸付以外の借入状況
年金担保貸付以外にも借入がある者は4割近く占めており、借入先(複数回答)については「クレジットカードローン」が27.2%と最も多く、次いで「銀行等のローン」24.7%、「住宅ローン」14.3%、「消費者金融」13.3%の順となっている。最も多い「クレジットカードローン」の借入は、男性よりも女性が多く全体の3割を占めている。
借入金額については、「50万円未満」が25.5%で最も多く、次いで「50~100万円未満」22.0%で、100万円未満が合わせて5割近くを占めている。また、「500万円以上」の借入も全体の1割を超えている。
15.福祉医療機構以外の年金担保融資の禁止
○ 福祉医療機構以外では年金証書を担保とした貸付を行うことが禁止されていることについては、「知っている」者が56.4%と過半数を超えており、「知らなかった」者が43.6%となっている。
○ 違法年金担保融資の被害については、被害にあったことが「ない」と回答した者は98.9%で、「ある」と回答した者は1.1%であった。
○ 被害にあった場合の相談窓口については、「知らない」が78.4%と、7割を超えていた。また、被害にあったときに相談したことがあるかどうかについては、「ない」が62.5%、「ある」が37.5%となっており、相談したことが「ない」が6割を超えている。
16.年金担保融資制度について(自由記載)
○ 年金担保融資制度をより利用しやすくするために(主なもの)
- 現在の制度でよいと思う。
- 借入限度額の上限(250万円、年金額の1.2倍まで)を引き上げてほしい。
- 長期(3年、5年、10年など)の返済、返済額の単位など、返済方法を多様化し、自由に設定できるようにしてほしい。
- 申込みから貸付実行まで期間を短縮してほしい。
- 追加融資を認めてほしい。
- 手続、書類を簡素化してほしい。
- 書類の字は大きく、また、記入欄も大きくしてほしい。
○ その他ご意見・ご要望(主なもの)
- 年金担保融資制度を利用することができてよかった。この制度を、今後も存続させてほしい。
- この制度を知らない人が多いので、もっとPRすべき。